No.9 節水型トイレが引き起こすトラブル

最近、リニューアル工事の拡大とともに、節水トイレの採用が増えている。節水型のトイレを使用すると、
水道代が年間でこれだけ節約でき、環境にも優しいトイレ、とメーカーでは謳っているいるので需要も高い。
デザインも洒落ていて、トイレは汚いというイメージは過去のものになりつつある。
設計や設備業者では、この節水型のトイレをセールスポイントに、併せて浴室の水廻り設備のリニューアルを
勧めている。しかし、個人宅ならまだしも、業務ビルになると節水トイレは思わぬトラブルを引き起こす
ことがある。

世の中、省エネ、省電力、節水が大流行である。「節約志向」がより強まっている。
某病院ではリニューアル工事でトイレや洗面器、排水管の更新工事を行ったところ、数日経ってトイレが詰まり、
業務に支障を来した。施工業者から「トイレが詰まったので至急修理して欲しい」との依頼があった。
また、某設備業者は、某女子大学でトイレのリニューアル工事後、何回もトイレが詰まるので、客先からは
施工業者の瑕疵を問われる事態に発展してしまった。そこで、排水管内にテレビカメラを挿入し、配管に異常が
ないか調べて欲しいとの依頼が来る。しかし実際、内視鏡を管内に挿入して調べても、配管の接続部も含め
異常は見当たらない。
施工業者からは、水に溶けにくいトイレットペーパーや紙おむつ、ナプキンなどを流したら詰まる、というように
メンテナンス上の問題であり、使用者側の使い方の問題で、瑕疵はない、と客先に説明している。
本当にそうなのか?

<大便器の構造>
大便器には常時水が溜まっているが、この水は配管からの臭いや虫などがトイレに侵入するのを防ぐトラップ
としての機能を持っている。水を流すとトラップ上昇管まで水位が上がり、溢れた水はそのあと下降管に
流れ落ちる構造になっている。流れ落ちるとき、便器内ではサイホン現象が発生し、溜まり水の汚物を水と
ともに吸引し、汚水管に流しこむ構造となっている。大便器は意外と複雑な構造をしている。

<汚水管の構造>
汚水管に流れ込んだ汚物をスムーズに流すには「動水勾配」が必要になる。動水勾配は配管の管径によって
決まっている。管内流速は 0.6~2.4 m/S を想定して施工される。
管径が65Φの場合は1/50、75~100Φでは1/100、125Φでは1/150の動水勾配が必要になる。
しかしながら、汚水管の場合、紙や汚物を洗い流すには管内流速の他、押し流すための洗浄水量が必要になる。
本来通常に運用していれば、この動水勾配に沿って汚物が押し流される。しかし、水量が少ないと、押し流す
力が減少する。従来型トイレでは1回当たり10~12リットルの水量に対し、節水型の場合は5~6リットルと、
半分の洗浄水量しかない。最近では5リットル以下で洗浄できると言われるトイレも販売されている。このような
少ない水量で汚物を流そうとすると、サイホン現象で無事便器を通過しても、汚水管に流れ込んだ後、水量不足
のため下流まで押し流すことができないおそれがある。洗浄水だけ先に流れ、管内に汚物が取り残される。
そして、さらに汚物が流れにくくなり、堆積してくる。その結果、汚水管が汚物で詰まり、トイレが使用できなく
なる事態に陥る。

以前、トイレの詰まりは異物(例えば水に溶けにくいトイレットペーパーの使用、ボールペン・各種カード類・
名札入れ)が便器内のトラップ上昇管に引っかかり詰まるという事例が多かった。最近は節水便器の普及により
便器のトラップ部に異物が引っかかるという詰まりより汚水管が詰まるという事例が多くなってきている。
こうなると、同じ配管系統の関連する何台もの便器が使用できなくなってしまう。

<トイレ詰まり防止策>
節水トイレを使用すると、水道代が年間14,000~15,000円もの節約になる、といううたい文句でリフォーム業者は
勧めてくる。しかし、詰まると、一度の修理費で一年分の節約効果は帳消しになってしまう。特に、各階に何台も
設置する業務用節水トイレでは竪管までの横引管が長くなり、汚物が管内に残りやすくなる。詰まりを防止する
対策として、洗浄水を増やすか、節水型トイレの採用を控えるかしたほうが無難かも知れない。
衛生面からも検討する必要があるのではないかと思う。

弊社の経験から、業務用節水トイレの場合、便器の枝管から合流部までの継ぎ手(エルボ)は2か所までに留める
ことをお勧めしたい。汚水横引管は管径が100Φの場合、竪管までの長さは3m位に留めたほうが無難と言える。
また、横引管最上流部には通気管(ドルゴ通気弁でも可)を設置し、管内で水と空気がスムーズに入れ替わる
構造にしておくことも考慮すべきである。
なお、地下階に設置するトイレで。構造上横引配管が10m以上長くなってしまう場合、流速を高めるために中間部
に50cm程度の落差を付ける落とし管(45度のエルボ)を設置するとよい。排水槽へは管口からストレートに
流し込むより、槽内の管端部にチーズを設置し、チーズ下側には30~50cmの誘導管(上部はエア抜き用)を
設置するほうが、横引配管内の空気はチーズから抜け、排水はスムーズに槽内に流れ落ちる。


トイレが使用できないと生理的にも問題ですし、業務に支障を来すことになります。水道代を節約することだけに捉われず、
節水トイレを使用する際は、以上のことを考慮して検討されたらいかがでしょうか。



                                                                 2017.12.15


         
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